国内籍のファンドの税制
投資信託には国内籍のものと外国籍のものとがあります(投資信託の種類を参照)が、ここでは国内籍の投資信託の税金についてのみ説明します。ほとんどの投資家は国内籍のファンドしか保有していないので安心してください。
税金がかかるタイミング
投資信託を売却(解約または買取請求による売却)したときや投資信託が償還されたとき、また分配金を受け取ったときに税金が発生します。税金は利益にかかるものなので、損した場合には発生しません。
たとえば、基準価額が10,000円のときにファンドを購入し、9,000のときに売却した場合は税金は発生しません。
確定申告について
確定申告とは、1月1日から12月31日までに発生した利益について、自分でそれを申告して税金を支払うというものです。
しかし、投資信託の税金は証券会社などで処理してくれるので、投資家が確定申告をおこなうことは基本的にはありません。ただし、複数の証券会社を利用しているときに損益通算をしたい場合は、確定申告をする必要があります。
株式投資信託と公社債投資信託
投信には株式投信と公社債投信があります。この2つは税金のかかり方が違うので、まずは手持ちのファンドについてこの2つのどちらなのかを確認しましょう。
この2つの違いについても「投資信託の種類」で説明していますが、簡単にいえば株式を組み入れられるかどうか?ということになります。株式をまったく組み入れないで運用されるのが公社債投信です。
目論見書などに「株式」か「公社債」かということが明記されているので、自分の手持ちのファンドについてまずこれを確認しましょう。ちなみに、REIT(不動産投資信託)のファンドは株式投信です。
株式投信も公社債投信も本来は税率が20%なのですが、いまは株式投信について特例措置が設けられており、株式投信の売却益や分配金の受取にかかる税率は10%になっています。
株式投資信託 | 公社債投資信託 | |
---|---|---|
分配金 | 10% 源泉徴収 特別分配金は非課税 |
20% 源泉分離 |
売却益(買取請求) | 10% 申告分離 特定口座(源泉徴収あり)の場合は源泉徴収 |
非課税 20%の特別控除 |
解約益と償還差益 | 10% 源泉徴収 | 20% 源泉分離 |
公社債投信の場合
公社債投信は利益に対して20%の税金がかかります。分配金、償還差益、解約益、売却益(買取請求による売却)すべてに対して源泉分離課税といって先に徴収され、残りが投資家の手元に届くことになっています(※)。
ほかの投信の損失などと損益通算をすることもできないので、なにも意識する必要はありません。
※ 厳密には売却益は非課税であり、20%の特別控除額が差し引かれることになっていますが、投資家から見れば課税されるのと同じことなのでこれも気にする必要はありません。
以下は、株式投信についての説明となります。
個別元本とは
投資信託は多数の投資家が売買するものなので、投資家それぞれで購入時や売却時の基準価額が異なります。そのそれぞれの購入時の基準価額について、税金の計算をするときには個別元本と呼びます。
単純に、あなたが基準価額10,000円のときにファンドを買えば、個別元本は10,000円となります。
分配金の税制と特別分配金
分配金は源泉徴収といって、投資家の手元に届くときにはすでに税金が差し引かれています。このとき自分の計算と実際の税額が合わないことがありますが、それは「特別分配金」によるものです。
購入時に基準価額が10,000円だったファンドが決算時に11,000円になっており、分配金が1,500円出されたとします。このとき、分配金にかかる税金は [ 1,500円 × 10% = 150円 ] とはなりません。
というのは、分配金が支払われた後の基準価額(分配落ち後の基準価額)が、購入時の基準価額(個別元本)を下回っているからです。このとき、個別元本を下回った分の金額を「特別分配金」と呼び、これについては課税されないことになっています。
この場合、11,000円から1,500円を差し引いたら残りは9,500円となり、個別元本を500円下回ることになるので、その500円については非課税となります。残りの分配金1,000円分については税率10%がかかり、税金は100円ということになります。
カンタンにまとめると、分配金受取時に、分配落ち後の基準価額が個別元本を下回った場合は、その差額分については非課税になるということです。
解約益・売却益や償還差益にかかる税金
換金したときの基準価額から個別元本を差し引いた部分(利益)に税金がかかります。
投資信託では、換金するときの方法に「解約」「売却」「償還」の3つの種類があります。この3つの方法のうち「売却」を選ぶと、税法上有利になることがあります(※)。
償還とは、そのファンドが信託期間の期日を迎えて、投資家の意思にかかわらず換金されることです。解約と売却は投資家が自分の意思で換金する方法で、前者はファンドの信託財産が取り崩される方法、後者は販売会社に買取請求をして買い取ってもらうという方法です。
解約か売却(買取請求)かは換金時に選ぶことができるようになっていますが、販売会社が銀行のときや、運用会社と販売会社が同一のいわゆる直販系の投信などでは、買取請求が選べない場合もあります。
解約と償還の場合は、利益は配当所得という区分になり、分配金と同じように10%が源泉徴収されます。
買取請求による売却の場合は、利益は譲渡所得という区分になり、税率10%の申告分離課税の対象となります。つまり、先に税金を差し引かれずに自分で確定申告するということになります。
ただし、源泉徴収ありの特定口座を利用している場合は、買取請求をおこなっても申告分離課税ではなく源泉徴収されることになります。
※ いままでは解約と償還は配当所得でしたが、2009年からは譲渡所得となるので、買取請求による売却との税法上の違いはなくなります。2008年までの換金については、いままでどおり有利不利があります。
損益通算について
損益通算とは、複数の株式や投信の利益と損失を相殺することによって利益を減らし、税金を少なくすることができるという方法です。通算後の損益がマイナスの場合は、最長3年間その損失を繰り越すこともできます。
解約・償還による換金と買取請求による売却とでは、この損益通算についての取扱が違います。
株式投信の解約益・償還差益 | 株式投信の売却益(買取請求) | 株式・ETFの売却益 | |
---|---|---|---|
株式投信の解約・償還損 | 損益通算不可(×) | 損益通算可能(○) | |
株式投信の売却損(買取請求) | |||
株式・ETFの売却損 |
買取請求の場合はオールOK、その損益をほかの株式や投信の損益と相殺することができます。解約と償還の場合は、その損失についてはほかの株式や投信の利益と相殺できますが、その利益についてはほかの株式や投信の損失との相殺はできません。
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